夜明けの合氣道




 

2004104日 月曜日 武道で学ぶ優しさ

 


「宇宙戦艦ヤマト」の作者で知られる松本零士氏の作品で、太平洋上にある熱帯の島ガダルカナルにおける、第二次世界大戦中の日本軍と米軍の戦闘を描いたものがある。
その一つが「グリーン・スナイパー」である。

日本軍の兵士一人と複数の米軍兵士が戦闘状態になる1シーンにおいて。

疲れて眠っている仲間の兵士を気遣い、そっと起さないように陣地を抜け出て一人で水を汲みに水源に来た日本兵が、米兵達の待ち伏せにあう。

二人分の水筒に水を汲み入れているときに、敵の狙撃兵に狙われ頭部を撃たれる。

弾道の角度が浅く、かぶっていた鉄兜がかろうじて銃弾を弾く。
頭部に重い衝撃を受け、一瞬気が遠くなりかけるものの、狙撃をされた射点に向け、日本兵は反撃を開始する。

その日本兵が持つ武器は、一発撃っては、大きな動作でボルトを引いて次弾を装填するボルトアクション式の38式小銃である。
対する米兵は、引き金を引けばすぐに次の弾を撃つことが出来る自動小銃を持っている。

ボルトアクション式の銃は、一度射撃をすると次に射撃をするために大きな動作で弾を装填するので隙が生じてしまう。一人で複数の敵を相手にすることは、至難である。

その日本兵は、次弾を装填しようとボルトを引いた瞬間を狙われ、米兵達の一斉突撃攻撃を受け、雨のように弾を打ち込まれ即死する。
最期は「ぐしっ」という声が咽喉から漏れて、目を見開いたまま倒れる。

その直後、目を覚まし仲間がいないことに気付いて心配してかけつけた日本狙撃兵と、その米兵達が鉢合わせになり、再び戦闘状態に陥る。
今度も日本兵一人と複数の米兵との戦いになった。

米兵達は、その日本兵が38式小銃を持つ普通の兵隊だとたかをくくり、同じ戦法で突撃をしかけようとする。
しかしその日本兵が持っていたのは連射可能の新型の自動小銃であり、彼は射撃においてもプロ中のプロである狙撃兵である。突撃をかけた米兵達は日本狙撃兵の神技の一連射を受け、一瞬のうちに倒されてしまう。

その後、その狙撃兵は仲間の日本兵の遺体を見つけて
「お前も、この銃を持っていたら、負けなかっただろうに・・・」
とつぶやく。

あらすじには、実際の作品と異なっているところもある。
しかも、ただの漫画の話でもある。
ただし私には、思うことが多すぎる作品である。

誰だって、負けたくない。
誰だって、殺されたくない。
戦う者として、その自覚があるならば、なおさらである。

最後に狙撃兵が、死んだ戦友に語りかける言葉は、最大限の優しさに満ちたものである。
狙撃兵でない普通の歩兵が、その新型銃を持っていても、その戦闘に勝利出来たかは、分からない。

しかし、彼がそう言い切ることに、彼が持っている真の優しさと思いやりが伝わってくる。

戦う者であるからこそ、そして本当の苦痛を味わって強くなったものだからこそ、無念のうちに倒された者の苦しみが理解出来るのだろうと思う。

そしてそこは、私が戦技研で拘っている大きなポイントでもある。優しさの根拠、とでも言うのであろうか。

他人より強い弱いとか上手下手とか、技が覚えられないとか上手に出来ないとか、そんな事で自己満足に浸ったり落ち込んだりしていることが、武道で学ぶ価値観や考え方ではない。
そんな考えから、相手を思いやる優しさにつながりはしないであろう。

 

 

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