型稽古の短所を考える2 恐怖に対する「心のありかた」

実際の戦いには、その人の「心のありかた」というものが問われます。

稽古と違い、相手は、そもそも自分の知らない人であるかもしれません。知っている人でも、それまで思いもしなかった別の凶悪な人柄を見せてくるかもしれません。

そうした相手は、こちらに何もさせないようにしてきます。自分が負けないようする為に当然の事です。憎しみや怒りなど稽古や演武ではあり得ない感情の爆発を自分に向けてきます。相手を委縮させ闘争心を萎えさせる為に当然です。

全身からみなぎる殺気と射るように睨みつけてくる目で口汚く威嚇する怒鳴り声を放つ相手を前にして、恐怖に飲まれず、それに対応出来る心の状態である自分がいるのか、という問題に行き着きます。

恐怖心は正常な人なら必ず持つ心理です。対処する能力もないのに恐怖を感じないのは、危機の認識がないだけです。それは正常ではないか、自身の危機的状況を理解出来ていないか、という事です。

身の前にある危機的状況を察知し、沸き起こる恐怖に対応出来る心になるには、それを意識した専門の訓練は必要です。同時に危機に対処する能力が高まれば自然に恐怖心への対応も出来るようになります。

通常の合気道の稽古では、そこまで踏み込んだ内容まで取り組む事は出来ません。

戦技研は、犯罪で行われる暴力に対処する訓練を、心のあり方から考えて行います。危機的状況の中に身を置き、抑制出来ない体の震えと増加する心拍数という状態でも、絶対に命を守れる方法から指導します。

2015年8月3日